実世界において,ロボットが人の介在なく,完全に自律して行動するための制御システム,情報処理システムの創出を目指しています.
現在ロボットが活躍しているのは,環境の情報が既知であって,予想外のことが発生せず,記号化され尽くした,いわば「閉じた世界」に限定されています. 私の研究は,この現状を技術的に打破することを目的としています.ヒューマノイドロボットを対象として,「実時間で動作すること」「実環境において破綻しないこと」「理論的に保証され,かつ実装可能であること」を全て充足するような自律化技術の研究開発を推進しています.
研究の基本コンセプトは以下の通りです.これらの考えを基軸として,数理科学的・情報学的観点側面から,研究を展開しています.
- ロボットは「計算機に身体が接続されたもの」ではなく,身体まで含めて一つの計算機として機能します.つまり,計算と運動は本質的に不可分であって,単純な計算機科学と機械制御の足し合わせを越えた,統合的かつ学際的視点が必要です.
- ロボットの行う「運動」は,道具や建造物と言った無機的な環境に対して,ロボットが実行可能な唯一の作用です.言語や視線のような,生体間で効力のある情報伝達手段は一切通用せず,運動を介してのみ,環境を変化させることができます.つまり,運動は,ロボットから無機的な環境への唯一の情報伝達手段となります.視覚,聴覚,触覚など,環境からロボットへ入った情報は全て,ロボットの物理的身体を介して,環境に還ることになります.ロボットが発現する運動は,情報の一表現とみなせます.
- 実環境は往々にして複雑であり,また常に変わり行くものです.したがって,実環境はある意味で無限の情報を有しています.しかしながら,生体に限らずロボットも,限られた計算資源しか持つことができません.この隙間を埋めるような,有限の情報で無限の情報を被覆する枠組みが必要であると考えます.